バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

35 ごめんね

「ルソー」
フブキがおにぎりを持って部屋に入る
ルソーはベランダの塀に寄りかかり、間もなく満月になろうとしている月を眺めていた

「珍しいわね、貴方が夜更かしだなんて」
「……確かに、最近は忙しかったですから」
必要なことしか口にしないルソー

「……行くんでしょ、カルミアに」
ルソーの手の動きが止まる
「何処でそれを?」
「ルソーの様子がおかしいのは、すぐに分かるわよ。きっと、危ないことだっていうのも分かる」

「でもね」
フブキはサンダルに足をひっかけ、ルソーに寄る
「貴方が何を思っていても、私は貴方の好きなようにさせようって決めたの。だから、一つだけ、約束」
フブキはルソーに覆い被さるように抱いた
「絶対、生きて、帰ってきなさい」
「……はい」

小さい頃、約束があると指切りをした
今はそんなことはしないが、嘘はつけない
ルソーはフブキの腕をとりながら、その温もりを感じていた