バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

3 街の怪盗と迷探偵

「先生、ついにこの街にも怪盗がでたそうですね!」
そういう私の目は、後から先生に訊けばきらきらしていたといった
「……んあ」
先生は眉間に皺を寄せたままソファにだらけて座っていた

「本で読みました! 先生たち探偵の宿敵にして好敵手! なんてカッコいいんでしょう!」
我ながら夢見がちだとは思ったけど、それだけ私の興奮は冷め止まなかった
「興味ねぇ」
それ故にだらけてそんなこと言う先生に少し困惑したのを覚えている

「燃えないんですか? 怪盗ですよ?」
「お前、俺が燃えたことあったか?」
「……ない、ですね」
「そういうことだ」

「もー! 先生も夢くらい持ちましょうよ!」
「ちっ、もっと読ませる本を選ぶんだった」
悪態をつく先生を無視して私は新聞を手に取る
「いずれあってみたいですね!」
「俺は嫌だけどな」
先生は夢のないことを言って、コーヒーを飲もうと手を伸ばした