バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

22 気弱な仮面

「そう、ですか。僕は貴方たちを傷つけようと……」
意識が回復した千鳥は、遠賀川と水城の説明を受けてそう呟いた
「幸い誰も怪我はしていない。安心しろ」
「ご迷惑をおかけしました」

「……千鳥」
遠賀川が声をかける
「近くに相模が転がってるのを見たんだが、あれもお前がやったのか」
「はい。気づいたら僕の、己の言葉が勝手に……」
「成程な」

千鳥はおそらく相模に嫌がらせを受けているだろう。遠賀川はそこまで理解していた
「もう、僕に関わらないでください」
そのために、千鳥は人間不信に陥ってることも分かった
自分がそうであったのだから

「悪いな。あんな事情を見た矢先、放っておくわけにはいかないんだ」
遠賀川は千鳥の目を見て手を取った
「俺たちに協力してくれ、千鳥。俺はお前の仲間になる」
「えっ……」

「俺も、お前の事もっと知りたい。仲間にしてくれよ」
水城も笑顔でそう言った
暫くぽかんとしていた千鳥だったが、やがてぼろぼろと涙を流しだした
「ありがとう、ございます……」
「仲間だろ? タメでいいんだよ」
「うん……」

遠賀川は彼を見て思った
仮面の持ち主は、複雑な環境にいると理解した