バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

16 死神、代行

幸せな生活が羨ましかった
学校に赴けば友達がいて遊んでくれて
家に帰れば暖かい家族が出迎えてくれる
そんな当たり前が、彼にはなかった

扉にぴたりと耳を当てると、男女の笑い声
「兄弟はいないんだよな、信行」
「本当にいいの?」
秀忠と家愛が信行を見る
信行はひとつだけ頷く

「お前が首を狩れ。それが条件だ」
「分かってる」
信行は胸に手を当てた
ズルズルと音を立てて伸びるそれは、まさしく死神の鎌だった
秀忠はそれを確認すると、自らの心器である斧を振り上げ、玄関の蝶番を破壊した

突然の音に驚いたのだろう
男女が慌てて玄関に向かう
玄関にたどり着くと、そこには黒い古ボロと骸骨の仮面の男がいた
手にはしかと鎌が握られている

「だ、誰だ貴様!」
男が言う。骸骨は答えた
「僕は『首狩り』。お前たちの首を狩りに来た」
その声で女の方が感づいた
「あなた……まさか!」
信行は骸骨の仮面をとった

逃げようとする両親の足を斬りつけ、その場にとどめる
「貴方、何を考えてるの!」
「そうだぞ! 実の親に何考えているんだ!」
「親、ですって?」
信行は二人を見下す

「貴方たちが知ってる××はもう死にました。僕は『首狩り』として二度目の「神生」を歩みだした」
信行は鎌を振り上げた
「故に貴方たちはもう不要です」
「ま、まって!」
「命だけは、どうか、命だけは!!」

「さようなら、父さん、母さん」