バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

13 実害と誘惑

「実害、だと?」
赤城の言葉に真宮が頷いた
「近隣に住む住人に被害が出始めた。警察の方で、被害届が相次いでいるらしい」
「できるだけ内密に進めたかったんだがな……」

「その点は大丈夫みたいだよ」
信楽が返す
「狙いはあくまでも私たち。だから、私たちを見つけると、皆そちらに誘導されるの」
「でも、そうなると誰かが陽動をしなければならないんだよな」
大黒は顎に手をやる

「俺がやる」
笛利が不意に手を上げた
「流哉……?」
「勿論、一番近い人間が誘導するのが一番だと思うが、真宮の力であらかじめ位置が分かれば俺がいける」

「そんな、流哉、危ないよ!」
高田が立ち上がる
「大丈夫だ。いざとなればこいつがある」
高田の頬にシャボン玉がぶつかって割れる

「いいだろ、山さん、スイ」
「構わないだろう」
「こっちも大丈夫」
「山さん! スイ!」
高田の焦る声が響く

「……悪いな、論」
笛利は呟いた