バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【スーツ武器オフ会】彼の過去【ノイジー編】

きしり。
骨のかみ合わない関節の音。
足を引きずる様に、ノイジーは歩いていた。
ヘッドホンで阻害していたはずの音が、日に日に大きく、多くなってきている。
助けてください。そう叫びたくても、この力の存在は殆ど知られていないし、知られたくない。

彼は気づいていた。
今や彼の世界の音は「気持ち」だけにとどまらず、あらゆるものが音になって襲い掛かってきていることに。


遡ること数年前。
まだ、彼が幼い子供だった頃。

ノイジー・ノーティスは兄のディクライアン、弟のタイローンと共にストリートチルドレンとしてその日暮らしをしていた。
黒い服の男たちが親を目の前で殺して以降、彼は耳に違和感を感じてヘッドホンをひろってつけていた。
後にそれが「気持ちの音」であるということを知るのだが、この時の彼の力は少々変則的であった。

いつも音が聞こえているわけではない。ただ、時々ディクライアンの物乞いについていくと、ふっとそれまで聞こえていた音が消えることがあった。
ディクライアンに何かしたのかと聞いたことがあるが、はた目から見ていたノイジーには、訳が分からないというディクライアンに目覚めた「洗脳」の力に気づいていた。

そして、それは自らの弟であるタイローンにも同じことが言えた。
タイローンが傍にいると、特定のノイズが聞こえる。ノイジーはそれを雑音だとは思わなかったし、いつしかそれに安心感を覚えていた。
しかし、ノイズは徐々に大きくなり、自分で制御できないまでになっていたのだろう。
タイローンはある日ディクライアンを傷つけてしまった。

しかたのないことだった。後に振り返ってもそう思う。
ノイジーにはタイローンの言わんとしていることが分かっていた。
だから、一言だけ謝って、痛みにもがく兄の腕を引いて離れてしまったのだ。
それがのちに大きな後悔になるとは、このときはつゆ知らず。
そして諜報機関KOGAに拾われたノイジーは、検査を受けて初めてその「怪物」と対面したのだ。