バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【スーツ武器オフ会】整備室の緊張【ノイジー編】

自分の背後の「怪物」は、音を食らって、ノイジー自身も食らって、目まぐるしい速さで成長していく。
早くこの呪いから解放されたいと何度願ったか。そして、それは呪いではないということに何度絶望したか。
無音の場所を。せめて、静かに流れる時の音が聞こえる場所を。
それを探し求めて、ノイジーは不意に立ち止まって横を見た。

「……整備室……」

技術部が普段ここで仕事をしていることは、ノイジー自身も知っていた。
今日は総出で外食に行く、なんて話もしていたと思う。
今ならここは静かなのではないか?
ノイジーは一縷の望みをかけて整備室の扉をあけた。
背後の「怪物」は腹を引きずってついてきた。

案の定、静かで暗い空間がそこに広がっていた。
暗いところに安堵を覚える少しひねくれた性格のノイジーにこの空間は心地よすぎた。
それまで熱かった身体が冷やされていく。何度か見たが使い方の分からない機械に体を寄せると、更に心地よい冷たさが彼から体温を奪っていった。
「……ずっと、この時間が続けばいいのに」
そう思った時だった。

「忘れ物!!」
その声とバァンとドアを開ける音にノイジーの心臓が跳ね上がった。
思わず身を寄せていた機械の陰に隠れる。
数度の深呼吸の後冷静になったノイジーは、機械の陰に隠れながらも声の主を目で追う。

「……」
先方は先ほどまで音符マークを転がしていたというのに、不意に黙り込み、右手にスパナを取り出した。
どうやらこちらに気づいたようだが、相手が分からないためか警戒している。
それもそうだ。ここにスパイに入ったものは大体誰かにボロボロにされてはじき出される。
よってここへの侵入は命知らずもいいところ。
それでもここまでたどり着いたというのであれば手練れというものだ。
……まてよ。もしかしたら自分は。
「敵と、勘違いされている……?」

ノイジーは腰の刀に手を当てる。
仲間に抜刀する気は毛頭ない。だから彼は立ち上がり、機械の陰から姿を現した。

「いた!」
先方が理解する前にスパナを振り上げているのも承知の上。
だから、刀から手を放し、素手でその右手を受け止めた。
「!」
「……」
細かい傷と、皮の厚い手。やはりこの子は技術部の申し子だ。
「僕です。大丈夫ですよ、西名さん」
ノイジーは力なく微笑むと、「怪物」に押しつぶされたかのようにその場に倒れこんだ。