バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

7 超自然的能力

裏事務所に戻ったハシモトは早速調べものにとりかかった
どんな事柄もハシモトは裏の裏まで調べつくさないと気が済まない質なのである
細い指先がキーを叩くたび、ひとつ、またひとつと情報が浮かび上がっていく

預言者』はそれこそ噂になっている程度の情報しかなかった
それだけ紛れやすく、目撃者も少ないということだろう
それでも数少ない証言を、噂であれ何であれ掘り起こしていく

預言者』は裏世界でもかなりの古株の従事者である
若い頃から裏世界にいたらしいが、顔を出すことはほとんどなく、窃盗や殺人をはじめとする犯罪は行っていない
ただ、彼はその頃から奇妙な力を持っていた

「「死を見る力」……だと?」
ハシモトは半信半疑で、いや、8割疑いながら呟いた
「心器」なんてものが存在する時代だ。人とはかけ離れた超自然的な能力を扱うものがいてもおかしくはない
そうは分かっていても、今までそういう現象に立ちあったことのないハシモトは首をかしげるばかりだった

「やぁ、エミ。そんなに難しい顔をしてどうしたんだい?」
そこにタイミング悪く名瀬田が現れた
ハシモトはちらりと名瀬田を見たが、再びパソコンに視線を戻す

「ふーん、超自然的な現象ねぇ」
粗方経緯を知った名瀬田は笑いながら言う
「そんなもの、500年前の僕も目撃したんだけどねぇ」
「なんだと。そんなことが」

「やだなぁ、誰のことだと思ってるんだい? 僕の大っ嫌いな「悪い虫」だよ」
名瀬田はけらけらと笑いながら言った
「あいつらは僕でも計り知れない力をもってカルミア研究所を襲ったんだ。そこは草香の方が詳しいんじゃないかな」
「……悔しいけど今だけは褒めてやる」
「そりゃ、どうも」

明日は休日だ。おそらく草香もいる
明日のうちに会ってしまおう。ハシモトはそう思い、パソコンを閉じた