「凄惨」の眼をもつ者【ディクライアン過去編・5】
あの町も。
あの町も、あの町も、あの町も。
最後には血だらけになって無くなってしまう。
俺にはそれが見えるようになっていた。
「洗脳」の能力を手放した代わりに「未来視」の能力を手に入れたのだ。
ただし、そんなに気持ちのいいものではない。
俺の眼に映る「未来」は「最期」なのである。
街はすたれ、人は死に絶えた世界しか自分には見えなかった。
寄りかかって眠るノイジーの頭をなでながら、引き離されたタイローンを思う。
あいつは大丈夫なのだろうか。
心配しかなかった。当然だ。たった二人の家族のうちの一人を失ったのだから。
俺は自分の服の一部をはぎとった。
そして、これ以上この世界を見たくないからと、
目を、隠した。