バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

「凄惨」の眼をもつ者【ディクライアン過去編・5】

あの町も。

あの町も、あの町も、あの町も。

最後には血だらけになって無くなってしまう。

俺にはそれが見えるようになっていた。

「洗脳」の能力を手放した代わりに「未来視」の能力を手に入れたのだ。

 

ただし、そんなに気持ちのいいものではない。

俺の眼に映る「未来」は「最期」なのである。

街はすたれ、人は死に絶えた世界しか自分には見えなかった。

 

寄りかかって眠るノイジーの頭をなでながら、引き離されたタイローンを思う。

あいつは大丈夫なのだろうか。

心配しかなかった。当然だ。たった二人の家族のうちの一人を失ったのだから。

 

俺は自分の服の一部をはぎとった。

そして、これ以上この世界を見たくないからと、

 

目を、隠した。