バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

28 音と情報

人目につかない河川敷の橋の下を選んだ二人は、お互いに正面に向き直る。

「時間無制限一本勝負。私の「仮面」を見抜くことができれば君の勝ちとしよう」

「それだけ「ばれない自信がある」ということだな。分かった」

互いに二歩ずつ下がり、暁は胸に手を置く。

「「「隔絶」無知の仮面」」

さっと彼の周りに白い紙が伸び、彼を取り囲む。頭上には回る筆。

「始めようか」

 

物はためしだ。まずは「仮面」に頼らずいこうと決めた暁は、手のひらを広げ地を蹴った。

よけるそぶりを見せなかった朝霧だったが、直前になって暁の平手を僅かに動いてかわした。

「!」

続けて何度か平手を振るが、朝霧は余裕の表情でかわしていく。

「こんなものではないはずだろう、遠賀川くん?」

 

らちが明かない。そう感じた暁は、一度離れて紙に触れた。

「コピー展開、「「虚偽」文字の仮面」」

ずらり、紙からインクが伸び暁を取り囲む。虚空の「仮面」のコピーである。

「ほう、そのように使うのだね。これは興味深い」

朝霧は大して驚かず、口の端を上げたまま暁を見る。

 

「燃えろ」

文字が赤くなり、炎となって襲い掛かる。

しかし朝霧は可動域を見据えたかのようによけて見せた。

「……」

 

「手数切れかい? いや、君はまだ手数を隠しているね?」

朝霧の問いに暁は答えない。朝霧はそれを見て嬉しそうに頷いた。

「まぁいい。今度はこちらから行くぞ!」

彼女の頭上に突如として光が集まっていく。

暁はとっさに、これが熱波であることを察した。

「コピー展開「「過護」防衛の仮面」」

彼の周りをまわっていた文字が消え、目の前に身を隠すシールドが現れる。

彼はそれを握ると、朝霧の次の行動に備えた。

 

「食らうがいいさ!」

集まった光が、レーザーのように解き放たれる。

下がることも考えたが、暁はあえて横にかわした。

「ほう、なかなか考えるじゃないか」

「……分かっていたな、「光が見えなくなることを恐れて」横にかわすことを」

「当然だ。私は天才だぞ」

「……いや、ちがう」

 

暁は盾を向け、レーザーを「反射」した。

朝霧の横を通ったレーザーはその太さを細くし、橋げたに焼け跡を残した。

「お前の「仮面」はレンズ。人間観察を持ち合わせ、相手の行動を読み操る「目」の持ち主だ」