バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

4 信じること

「おお、斎藤君に立花君ではないか」
朝食を終えて乙哉に呼ばれ、広間へ向かう廊下で二人に声をかける男性の声。
振り返ると、和装に身を包んだ男女の姿があった。
「巌流島様、甲賀様」
「まだ緊張はしてないかね?」
「ええ、まだ少し、信じられなくて」

 

「気を張らなくてもいいのよ。乙哉君も申し子たちも、ここにいる人は皆優しいんだから」
「巌流島様達も、申し子様に?」
「ああ。我々は石川君の補佐だ」

 

「……私たちなんかに、世界を守るなんて役割、担えるのでしょうか」
斎藤が小さく呟く。立花も頭を振る。
「うるはに同意します。我々は世界に見放された上に、体力に一切の自信がありません」
「そこも考慮してくれるんじゃないかね、乙哉君なら」
巌流島が顎に手を置いて考える。甲賀は微笑んで続けた。
「石川さんみたいな無茶ぶりは言わないと思うわ、私も」

 

「おっと、立ち話も長くはできんな。呼び出されたのだろう?」
「あんまり気負わずに。大丈夫ですから」
それだけ残し、巌流島と甲賀は歩いていった。
その後姿を見、斎藤と立花は目を合わせた。
「……今は、信じるしかないでしょう」
「同意します。裏切られることには、慣れてますからね」