バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

新しい始まり

ふと、目が覚めた
倒れこんでいた床が僅かに温もりをもっている
頭が痛い。重い何かに潰される感覚である
それをこらえて起き上がって辺りを見る。どうやら小さな白い部屋である

「やぁ、目覚めたかい」
不意にそんな声をかけられ、振り向いた
つい先程知った顔が、そこにあった
「鬼才様…」
「おや、僕の名前が分かるんだ。ということは、つい先程何が起こったかは覚えているかな?」
ああ、ああ、そうだ、思い出した
我々は「死んだ」のだ。死んだ筈なのだが

「どうやら当初の計画通り、新しい「セカイ」に転送されたらしいね」
本来なら記憶のリセットがかけられる筈なのだが、当初はそんなこと分からなかった
「…生きているのですね、私達」
床に視線を落とすと、柿本様、真苅様、栗原様がまだ眠っていた
「残念ながら、ね」
そう言う鬼才様はどこか楽しそうだった

「…さて、この先についてなんだけど、君は行きたいところとか、やりたいこととかあるかい?」
鬼才様に問われ、私は首を振りました
「元来死ぬつもりでしたので、先のことは考えておりません」
「だろうと思った。だったらさ、一寸だけ僕の我が儘を聞いてくれないかな」
「鬼才様の、ですか?」

「僕ね、いつか自立して、探偵がやりたかったんだ」

かくして我々は「異探偵」の道を歩むことになる

これは、ちょっと別のセカイでの話





「…酷いですよ、鬼才先輩…、私をおいて、死ぬなんて…」