バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

10 吸血鬼の告白

浩太の元に現れた華村は、巌流島からの報告が既に彼の元まで届いていることを知った。
「自分で言うのもおこがましいですが、僕は外観に置いては秀でた特性を持っていました」
華村は浩太の隊士だ。故に華村は、自分の身の上をいずれ明かさなければならないだろうと思っていた。
「人を誘惑して連れ去る、吸血鬼のような存在。「忌み子」故、僕はそう呼ばれてました。乙哉君に素質を見破られた時、ああ、やはり僕はそういう運命なんだな、と思ってしまいました」
「「美麗」の素質。美しさであらゆるものを引き付ける素質……。難しいね」
「ええ。僕も掴みあぐねていますから」

 

「好きでこんななりになったわけではないのに」
そう言って落ち込む華村の背を浩太は撫でる。
「好きな人とかいたの、君?」
「はは、好きな「人間」なんていませんよ。面白いことを言いますね」
笑う華村だが、目が笑っていない。浩太はその目に引き込まれそうになる自分がいることに気が付いた。
「……それ、単純に容姿の問題ではないんじゃないかな」
「え?」

 

浩太は立ち上がる。
「華村君、ちょっと動けるかな?」
「ええ、大丈夫ですが……」
「ちょっと、手合わせしようか」
浩太はグローブをはめた。