バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

5 鑑定の時間

昨日の広間に呼び出された華村、斎藤、立花の目の前には、大きな箱が置かれていた。
「昨日はどうだった、皆? ぐっすり眠れたかな?」
乙哉がニコニコと笑いながら問う。三人はバラバラに、曖昧に頷く。
「久しぶりに布団というもので寝たから、疲れも溜まってたのか、気持ちよくてつい」
「部屋も綺麗なところが割り当てられ、今のところ、十分すぎるほど満足しています」
「うるはに同意します。ありがとうございました」

 

「さて、本題に入ろうか」
田辺が箱の蓋を開ける。中には大量の武器が眠っていた。
「君たちにはこの武器の中から自分の物を一つ選ばせてもらう。本来なら俺らが勝手に決めて勝手に振り分けるものだが、長く使うものだ、肌に合わないと厳しいだろう」
「だから、お前らの意見も取り入れたいと思っている。何でもいい。気がかりなこと、持っている知識、考え、話してみな」

 

三人は顔を合わせる。暫く目線を重ね合わせていたが、やがて斎藤が口を開いた。
「……正直な話、我々、私とりかは戦闘には向いておりません。純粋な腕力も体力も殆ど持ち合わせていないのです」
「うるはに同意します。しかし、どうしてもというならば、私たちにも考えがあります」
「ふーん、聞かせてもらえるかな」
浩太が興味を向ける。
「力のないものは遠距離から。そのような知識がいかにして広まったかは分かりませんが、それは大きな間違いです。弓の一本を引くだけでもかなりの体力を使い、筋力がなければ投げた物は威力を持たない」
「ならば、私たちが使うべくは近距離の武器。刀が理想ですが、これから鍛え上げて重い物を振り回す方が正解です」

 

「なるほど。だったら、こんなのはどうだろう」
田辺は箱から大型の武器を二つ取り出した。
モーニングスターとメイス。使い方は分かるな?」
「勿論。しかし、重すぎないですか」
「安心しろ。これは振り回すごとに重心が移動する。思ったより扱いやすいはずだ」
「それならば、暫く手元に置いておきましょう。いいですね、りか」
「分かりました。もらい受けます」
田辺から武器を受け取った二人は下がる。

 

「さて、華村君はどうかな」
浩太の声に華村は顔を上げた。
「僕も、男とはいえ、戦闘にはあまり向いていません。でも、二人のような知識があるわけでもない。本当に、何に向いているかすらも分からないんです」
「ふむ。乙哉、彼の素質は?」
「素質?」
「「美麗」だね。それ単体では威力は発揮できないけど、サポートにかなり向いた素質だよ」

 

「だったら、こんなものはどうだろう」
田辺が取り出したのは、鎖鎌だ。
「殺傷力より妨害で威力を発揮する。一人で行動するのもいいが、最初のうちは誰かと行動した方がいいかもな」
「あ、ありがとうございます……」

 

「大丈夫。ここでの生活も慣れてくるから、ゆっくり頑張っていこうな」
浩太が華村の背を軽く叩く。三人は不安げな顔をしながらも頷いた。