バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

33 連携

 同時に飛び出した石川と紫音が空で対峙する。互いに蹴りあった足が弾かれ回転がかかり飛ばされる中、先に空中で態勢を整えた石川が拳銃を紫音に向ける。しかし、彼女の背後が光ったのが見え、頭を伏せて地面に落ちる。頭上を光の矢が通り過ぎた。
「光の具現化か。流石に狂信者だな」
そのまま地面を転がるように頭上から降ってくる矢をかわしていく。その場にひと時でも止まれば怪我を負う勢いだ。石川はステップを踏みながら二丁の拳銃を蒼音に向かって放つ。しかし、彼女に届く前に紫音が弾を蹴り落した。

 

「上手い連携だな。舌を巻いてるぜ」
「貴方に言われても嬉しくないわ」
「私たちを見捨てたこと、忘れたなんて言わせないわよ!」
遠方で眺める甲賀は首を傾げる。忌み子を救う活動をしているはずの四神の申し子が、「一般人すら救えなかった」?
「御館様、何かご存じですか」
「……神とて、万能ではない。救える人数も限られてくる。まして「狂信者」と呼ばれる人間は、勝手に神を信仰し、勝手に裏切られた存在じゃ。理由は各々じゃがな」
「そんな、どちらも救われないじゃない……」

 

縦横無尽に走り回る石川は、疲れの色すら見せずに弾を放つ。接近戦を仕掛ける紫音もいなす。その眼差しは真剣なものだった。
(……あまり怪我は追わせたくないな)
石川は、足を止めた。
「! ツボミちゃん!」
「わかってる!」
正面から襲いくる矢の嵐。ツボミも接近し、攻撃を仕掛ける。石川はすっと息を吸うと、拳銃によりすべての弾をはじき落とした。
「うそっ……」
「ツバサちゃんを傷つけるなぁ!!」
ツボミの膝蹴りを顎付近で受け、大きくのけぞる石川。しかし、視界がさかさまになろうとも、彼は拳銃を向けていた。
放たれる弾を間一髪でよけた。だが、石川はむしろ口に笑みをたたえている。何事だ。そう思った時、石川の口が動いた。

 

「あとは、まかせた」

 

石川の後方。夢中になって気が付かなかった。巌流島が、抜刀の構えでそこで集中力を高めていたことを。
 飛んで、一閃。「無残」の斬撃が二人を貫いた。