バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

37 かみあわない会話

「なんですか、突然」
「メインコンピュータの電源は」
「予備電源が入ってるから大丈夫……だけど」
乙哉は振り返る。
「異常がないはずのシステムが一気に中断したね」
「緊急事態ということですか」
「あんまり考えたくないけど」

 

「ああ、こんなところにいたんだ」
不意に男性の声が聞こえ、三人の視線が扉に向く。
白衣姿の背の低い、細身の男がそこにいた。後ろに制服姿の女性もいる。
「会いたかったよ。君の声があまりに素敵すぎて、一目見たいと心がざわついて止まらなかったんだ」

 

「りか、彼に見覚えは」
「一切ありません。乙哉様は」
「僕もないな。誰に向かって話しているんだろう」
小声で会話を交わす三人。それを無視するように男は両手を広げる。
「君の話を聞かせてくれないか。それだけでいい。僕は「システム」を創るために君たちの声を聴いて回っているんだ。」
一歩。それに気づいた三人は各々の武器を取り出した。
「おっと、それ以上これに近づかないでくれるかな」
「これは私たちにとっての核です。好き勝手に扱われると困ります」
「そのまま帰ってくだされば見逃して差し上げますから」

 

「……やれやれ。これだから人間は苦手なんだ」
男の後ろにいた女がしずしずと前に出る。右手と右足を前に出し、型式をとる。
「リア、殺しちゃだめだよ。気絶させてやってくれ」
「了解いたしました」
リアと呼ばれた女性は、急激に間を詰めた。