バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

27 優しささえも

ヘッドホンを通った音楽は、今流行の女性シンガーのロックナンバー。彼は研究を欠かさない。なぜなら彼もまた純粋なロックシンガーであるからである。

 

「……」

 

彼は音楽が好きである。そして数か月前に一羽の雛を助けた。
雛は音楽の世界へと飛び立ったが、そこにあるのが純粋に広く青い空でないことを彼は知っていた。
助けてあげることもできた。だが、雛は既に止まり木を見つけたらしい。

 

「……」

 

このバンドが好きなんです。その声は何度も聞いてきた。だが、彼の欲する言葉はそうではなかった。
彼が本当に欲しかったものは。

 

「……」

 

その「欲しいもの」を手に入れるために、彼は猟銃を持った。音楽の空を舞う色とりどりの翼を、一つ残さず撃ち落とそうとした。そのために、彼は「鳥を観察する」。

 

「……」

 

そのやり方が、間違っていたとしても。