バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

48 暴れるお姫様

「二回戦を勝ち抜き、準々決勝に進んだのは!」
いよいよ結果発表だ。羽鳥も喜咲も壇上に上がり、ぐっと両手を握る。
アベルとカイン、HELIOTROPE、スケッチブック……」
読み上げられるグループ名。上がる歓声。呼ばれていない者の緊張。そして。
「……salvatore。以上8組です!」
「……!」
羽鳥は顔を上げる。二回戦勝ち抜きが確定し、笑顔がこぼれる。だが、その一方で。
「ちょっと! どういうことよ!」
喜咲が司会に噛みついた。

 

「Beau diamantの名前がなかったじゃない! 選ばれてないはずないわよね!?」
「ええっ、……いえ、今回は選出されてないですね」
「嘘つかないで! 今回は会場投票制よ、人気のある私に票が入らないわけないわ!」
舞台上で滅茶苦茶に噛みつく喜咲。アーティストたちはそれを眺めていたが、その矛先が突然羽鳥を向いた。
「大体! 私に手を上げたsalvatoreが準々決勝に進んで、私たちが落ちるなんて納得いかないわ!」
ざわめく会場。何も言わない羽鳥は、しかし「事実」であるそれに下手に口を開かない方がいいと押し黙っていた。かつかつと足を踏み鳴らし、羽鳥の胸倉を掴む喜咲。
「ムカつく、ムカつくわよ貴方! そんなに私が気に入らないのかしら?」
「……」
会場が混乱しかけた、その時。

 

「それに関しては、僕から弁明させていただこうかな?」