バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【アンサーズ外伝】西園寺は間違えない

ユーラシア大陸の草原で遊牧や交易をおこなった民族を何という?』
騎馬民族!」
重い一撃を叩き込まれたQモンスターが、唸る間もなく消え去った
ふう、と息を漏らし、西園寺ナツミは汗をぬぐう
「今日もなかなか調子がいいじゃないか」

「お疲れさん、ナツミ」
パンパンと手を鳴らし、佐々木シンが校舎から出てくる
「見ていたのか、シン」
「流石に一部始終全部とは言わないけどね」
「どうだ、今日も私は絶好調だろう?」
「うーん、いつもよりちょっと手が遅いみたいだけど?」
「ははは、相変わらず辛辣だな」

彼女、西園寺ナツミは、この私立の学校でサークルを纏めるエリートである
「学力向上団体 えんぴつ党」
その名の通り、学力の向上と鉛筆の良さを訴える小さなサークルである
メンバーはさほどおらず、生徒会の補助を名目としているが、その実ナツミが党員を連れてQモンスターを倒すのが日課となっていた
そんな彼女だからこそ、その自信故に、とある口癖ができていた

「にゃぁーッ! いた! ナツミ、シン!」
高い声を上げ、党員である逢魔ヶネコメが駆け寄る
「どうした、ネコメ」
「そこの商店街の路地裏に、他校の不良がうちの生徒を連れ込んでるのを発見したニャっ!」
「何だと!」

シンはちらりとナツミを見るが、正義感の強いナツミのことだ、どうせ助けに向かうと言ってきかないのだろうと首を振った
「ナツミ、行くんでしょ?」
「当たり前だ」
「仕方ないねぇ。僕もいくよ」
二人が視線を向けたのを見、ネコメも一つ頷いた
そして、踵を返して走り出した

「や、やめてください。お金なんて、そんなに持ってないですっ……」
か細い声が路地裏に消える
三人の男たちに囲まれ、一人の少女が震えていた
「そんなこと言うなや。ほら、早く」
「ですからぁ」

「みーつけた」
その時、男たちの後ろから間延びした声が聞こえた
彼らが振り返ると、妙な恰好をした人物が三人。そのうちマントを羽織った男が言った
「困るなぁ。『勉強戦争(テスト)』はまず僕らを通してくれないと」
「あぁ? 誰だ、てめぇら」
一人のカツアゲ男の声に、前に立っていた女がにっと笑い、ペンデバイスを取り出して向けた

「学力向上団体えんぴつ党! その生徒から金を巻き上げるなら、まずは私たちを倒してもらおうか!」

「私は間違えない」。それが彼女、西園寺ナツミの口癖
彼女にかかれば、どんな難問もたちどころに消え失せる、まさしく「天才」であった