バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

22 無償の愛

「マヨイさん!」
後ろからそう呼び止められ、マヨイは振り向いた
ヤヨイが立っていたことを認識すると、彼女は『篝火』から離れ、ヤヨイに抱き着いた
「ヤヨイさん! よかったぁ、無事だったぁ……!」
「マヨイさん、ごめんね。頑張ったね」

「ありがとう、ライターさん。貴方のおかげよね」
ヤヨイは『篝火』に向かってそう言う
『篝火』はフードを引っ張り、そっぽを向いた
「俺はハシモトに指示されて来ただけだ。大したことはしていない」

「知り合いなんですか?」
マヨイの疑問にヤヨイが答える
「ハシモトとのつながりでね。言いづらいけど、彼もまた殺人鬼なんだ」
「……じゃあ、さっきの男の人は」
「殺した。不満か?」

マヨイは視線を落とした
「そう、ですか……」
マヨイが何を考えているのかつかめず、ヤヨイは首をかしげる
「……不満そうだが、こうでもしなけりゃお前が死んでいたんだぞ」
ライターはマヨイを見下ろした
フードで隠れて顔はよく見えない

「思いやるのはいいことだが、無償の愛は時として自分を傷つけ、殺す。覚えておきな」
『篝火』はぽんとマヨイの頭を叩くと、そのまま立ち去った
ぽかんとしてるマヨイの背を、ヤヨイが押す
「さ、今日のところは帰ろう」
「あ、はい」
マヨイはようやく一歩踏み出した