33 真相
マヨイの心が迷って揺れ動いているとき、ハシモトはとある情報を手に入れていた
それは、マヨイの父の死について
首を吊って死んだのは間違いなかったが、その前に誰かに後ろから絞められた跡が残っていた
そう、マヨイの父の死は『リース』によるものであったのだ
「でも、なんでそんなことしたんだよ? マヨイの親父は、カルミアに所属していた普通の会社員だろ?」
「ここで言及したいのは、親父のほうではなく、マヨイの方だ」
アイラの疑問にハシモトは返す
「マヨイの容姿はヤヨイにそっくりだ。だから、間接的にでも「ヤヨイたちに殺された」ことにすれば、マヨイがカルミアに協力するようになる。そう読んだ犯行だったとしたら」
「じゃあ、私を取り込むだけのために、お父さんは……」
「あくまで憶測だ。詳しいことは『猿回し』でも捕まえて吐かせてしまえばいい」
「もっとも、それでマヨイが納得するんだったらな」
ハシモトはそういい、マヨイの方を向く
マヨイは手を握り、顔を上げた
「私、ハシモトさんたちを信じます」
「つまり、お前とマヨイ・ハヅキは……」
悟った『猿回し』が唾を吐いた
「「最初から入れ替わってた」のか!」
屈強な男から逃げ回っていた「ヤヨイ」もとい、マヨイは、後にルソーたちと合流して男たちをいなしていた
そして、あらかじめハシモトの情報網で『猿回し』の居場所を突き止めていた「マヨイ」もといヤヨイは、『猿回し』を捕まえるために単身乗り込んできたのだ
「ちっ」
『猿回し』は手元のパソコンのキーを押す
響き渡るサイレン。奥から現れる怪物
しかし、ヤヨイはひるむことなく、部屋の奥へと突っ込んだ
吹き荒れる風。飛び散る血しぶき
耳を塞ぎたくなるほどの大きな咆哮に、ヤヨイは突っ込む
いつの間にか『猿回し』はいなくなっていた
それでも、ルソーたちが交流するまで、ヤヨイは一人狂ったように戦っていた