バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

6 出会うべくして

煉瓦敷の道端を、黒ずくめの男を連れて真は歩く
平々凡々な男としての道を歩んだ方が得策だったのだろうか
最近はそんなことまで考えてしまう
「でてくてぶ」にさえ憧れなければ、こんなことにはならなかったのに

「……ん?」
不意に、彼の鼻が不思議なにおいを捕らえた
横を見ると人ひとり通れそうな細い路地
彼は自然とそちらに足を運んでいた

歩くほどにその匂いは強くなっていく
今にも吐きそうな、鉄のようなにおい
嫌な予感がしていた
そして、最奥にたどり着いた時、彼ははっきり見た

そこいらが赤く染まっている
地面に人が折り重なって倒れている
そこには警察の姿もあった
そして目の前にいる男
彼は今までに見たことのないほど大きな「黒い気」を背負っていた

危険を察知した真は逃げようとしたが、ついてきていたマコトに止められた
「逃げないで、真」
ふっと、彼の中から正気が消える

「君には見えているはずだ、彼がまとう黒い何かが」
呪文を唱えるようにマコトは囁く
真はくるりと男と向き直った
「これは警察にもお偉いさんにも解けない「事件」だ。解き放つのは、君しかいない」

「さぁ、言ってみなよ。君が一番言いたかった言葉を」
すっと指を立て、男をさした真は言った
「……「犯人は、お前だ」」

目の前の男は倒れ、黒い気だけが飛び上がる
それは大きな獣へと変貌し、真の前に降り立った
正気を取り戻した真は今度こそ逃げようとしたが、腰が砕けて動けない
獣が襲い掛かろうとした瞬間、声が聞こえた
「『怪盗奥義一ノ型・開花』!」

ぐわり
獣の道を遮るかのように突然現れたのは、炎
真の前に立ったマコトは笑いながら言う
「ありがとう、真。これで、「欠片」を回収できる」

炎は威力を上げ獣を取り囲む
獣は一つ吠えると炎に巻き込まれて消えていった
呆然とする真を横目に、マコトは地面に落ちていた黒い欠片を拾い上げた