バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

5 言いたかった言葉

渡来の書物は面白かった
元来読書家の彼にとって渡来の書物はそれだけで興味をそそる代物だった
中でも目を引いたのは「探偵小説」
「でてくてぶ」……もとい「探偵」が事件を解決する物語だ

その中で探偵が決まって言う科白がある
「犯人はお前だ」
私の推理は外さない。それ故に言える自信の現れ
彼はその科白に憧れていた

ところが彼の周りにはそんな「事件」起こりやしない
平和でいい事なのだが彼はそれが不満だった
この科白は、いつか言える日が来るのだろうか

「「犯人はお前だ」、か」
事務所の椅子にもたれかかり、真は呟いた
ソファに寝転がるマコトにもその声は聞こえていた
「そんな科白、言えないんだろうな」

「言えるよ」
マコトは独り言のように返した
「言えるよ。君に覚悟があれば」
真は首を傾げた