バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

35 整理整頓は慎重に

「つまるところ、僕らは「正義の味方」に襲われて、石川は「元狂信者」に襲われたと」
浩太はテーブルにカップを置く。
「面倒なことになってきたな」
「ああ、カオスカオス。まさか西の果てを目指していたのは俺たちだけじゃないとは」

 

華村は入り口近くで部屋の中央を眺めている。
部屋に集まっているのは一部の面子。四神の申し子であるリーダー:浩太、田辺、石川。一連の事件に巻き込まれた面子:華村、カワウチ、巌流島、甲賀。そして、「正義の味方」である松浦、竹田、梅沢に、「元狂信者」紫音、蒼音。
人の希望を背負い超常現象に立ち向かう、力を持たない人間「正義の味方」である松浦たちは、最近噂にはびこる忌み子の討伐に明け暮れていた。無論、忌み子側の事情は知る由もなかった。意図的に情報がせき止められていたと見える。
神を信仰し裏切られたと言い伝えられ四神を目の敵にしてきた「狂信者」である紫音たちは、常軌を逸した力を手に入れたがゆえに神を討伐しろと送り出された。
それぞれの意志がすれ違い、このような衝突が起こった。これが正しい見解だろう。

 

「つまり、「西の果てに導いた存在」「忌み子を叩かせる存在」「神を邪に変えた存在」という大元によっては全員の利害が一致するというわけだね」
浩太はつぶやく。
「……まぁ、いいでしょう。私たちとしても人に仇成すものであるならば徹底的につぶさなければならないので」
「今回は信じてあげるわ。でも、次はないって思いなさいよ」
「うん。よろしくね、皆」
浩太はにっこりと笑って見せた。

 

『……田辺、聞こえるか!』
その時、田辺の頭に音声が流れてきた。
「ああ、聞こえるぜ」
『よかった! 急に通信が途絶えるんだもん。心配したんだよ』
「こっちは大丈夫だ。お前たちはどうだ」
『大丈夫、だけど』
乙哉は言葉を切って返した。
『一つ報告させてくれるかな?』