バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

21 不穏漂う村

 歩き続けて十日と数日。疲労感はないものの、人目につかない道を選んでいるがゆえに見えるのは山と森ばかり。そろそろこの緑も見飽きてきたなと華村はぼんやりと思う。
「この先を抜けた村に宿をとっておいたから、今日はそこで休むことにしようか」
浩太が声をかける。まばらな返事を聞きながら華村は思った。世間的に嫌われている忌子を、村とはいえ受け入れてくれるとは、どんな特異な村だ、と。


「……あの」
小声が聞こえた。女性の声だ。後方を見ると、眉間にしわを寄せる隊士がいた。
「巌流島さん、甲賀さん?」
「……」
難しそうな顔をする二人を見、華村は首を傾げる。すると、一番後ろからついてきていた石川が隊士を抜いて二人に声をかけた。
「大丈夫だ。俺たちがうまく話を通している」
「やはり、あの村なんじゃな」
「何か考えてなければいいのですが」

 村について、華村は知った。
 この村は、かつて巌流島を虐げ、甲賀村八分にして追い出した村であると。