バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

24 港町の宿にて

翌朝、華村達一行は予定通り村を出た。巌流島と甲賀の様子を見たが、彼らはなにも引きずっていなさそうだったので安堵した。
「少し遠くなるけど、この先にある港町に向かうよ」
浩太の声に頷きながら、一行は歩を進める。港町までは日が沈む前に到着した。

 

「華村君、昨日はありがとうね」
宿屋につき荷物を整理していた華村の元へ浩太が来る。華村は立ち上がって笑いかけた。
「僕は大したことはしてないですよ。お二人も協力的で正直助かりました」
「ならよかった。部屋、入っていいかい?」
「どうぞ」
華村がすすめた椅子に座る浩太。華村はベッドに腰を下ろした。
「何かいい話はきけたかい?」
「いろんな話を聞かせてくださいました。やっぱり、経験は糧になる」
山奥に星を見に行ったあの日、二人は思い出話を並べてくれた。それは決してすべてがいい思い出ではなかったが、それを笑い話にしてしまう二人の強さを垣間見た気がして、華村は素直に尊敬していた。

 

「……華村君、君の実力を買って、明日、任務を渡したいんだけど、いいかな」
「ええ、僕でよければ」
「今日通ってきた森、何かを感じなかったかい」
華村は思い返す。確かにあそこは
「はい、気味が悪かったというか、悪いものの気配がしました」
「感じ取れているね。明日、数人を選抜してあの森の視察に行ってもらおうと思うんだ」
「そのチームに、僕を?」
「頼めるかな?」

 

 荒事は苦手な華村だったが、今はそれよりも役に立てる喜びのほうが先に来るようになっていた。
「わかりました。留意しておきます」
華村は笑顔で返した。