バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

42 成長

「皆、準備はできた?」
浩太は皆に声をかける。返事が飛び交う中、華村はじっと手を見ていた。
「この街を抜けてまっすぐ歩けば西の果てだ。何が待っているかわからねぇ。万全の準備を心掛けろ」
「待機組は万一の時を考えておいてくれ。まとめるのは任せるよ、巌流島さん」
「あいわかった。気を付けて行ってくるんじゃぞ」
「何かあれば通信を」

 

「……華村君」
浩太が優しい声で華村に呼び掛けた。
「君は優しいから、この事態に関して疑問を持っているだろうね。きっと、相手側にも何か事情があるんだ、と。」
「……」
「選抜隊に選ばれたからと言って、無理をしてついて来いとは言わない。でも」
「いえ」
華村は立ち上がる。
「僕は、弱い自分を断ち切るためにここまで来ました。こうなることも最初から分かっていました」
華村は、同じく準備をする松浦たちと紫音たちを眺める。
「優しさには、時に厳しさも必要となる。身をもって実感してますし、それは、この事件を解決するために重要なことなんだと思います」
「……成長したね」

 

「行くぞお前ら! 目指すは西の果てだ!」
華村は立ち上がり、一歩歩を進めた。