悠久を生きる人魚の世界
「みっちゃんはすごいよね。走るのも速くて、歌もうまくて、いつまでも美人で。羨ましいよ」
「でも、友達はいなかったよ」
「え?」
「その時は、皆物珍しそうなものを見るように私を見ていた。話しかけたら喜ぶけど、アイドルに……ううん、珍獣に話しかけられたときの喜び方だったの。……りんちゃんだけだよ、私と平等に話してくれたのは」
「そんな。私たち、幼馴染だったじゃない。そりゃあ、誰よりも優秀で研究所の人たちが選んでくれたって聞いたときは誇らしかったけどさ。みっちゃんは、ずっと私の友達でしょ?」
「……ねぇ、りんちゃん」
「なぁに?」
「笑わないで聞いてくれる?」
「なによ。もったいぶらないで言ってよ」
「……私、りんちゃんが好き」
「……私も、みっちゃんが大好き」
「……うれしいな。」
「みっちゃんはすごいよね。走るのも速くて、歌もうまくて、いつまでも美人で。羨ましいよ」
「なら、なってみる?」
「え?」
「りんちゃんも人魚になってみる? そしたら、ずっと一緒だよ。ずっと、ずーっと」
「そんな。でも私、」
「今はこんなに離れちゃったけど、りんちゃんがおばあちゃんになっても、私、りんちゃんが好きなの。ずっと、一緒にいたいって、願っちゃダメ、かな?」
3XXX年。
世界は、人間がエゴで生み出した「人魚」が支配していた。
それはあまりにも幸せな征服活動で、誰も泣かない、誰もが幸せなままの支配だった。