バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

33 一回戦前日、それぞれの思惑

ひなちー、結局最後まで悩んだままだったわね。
初めての舞台がこんなに大きいんだし、うまくいかなくても問題ないわ。そもそも私たち、ネットミュージシャンだもの。顔出しなんて専門外よ。
だから気楽にしてればいい。気楽に見守っていればいい。
……でも、負けるのは悔しいわよね……。

 

……よし、あとは当日に実際に投影して調整するだけ。10分で間に合うかな。
演出にはこだわったけど、羽鳥さんがどう歌うかまでは計算に入れ損ねたし、北河くんの注文もすこし気になるなぁ……。言われたとおりに作ったつもりだけど……。
……『Happiness trae』は私も思い入れがあるし、あとは羽鳥さんと安藤くんに託すしかないか……。

 

ぎりぎりまで調整して、やっぱり安定しなかった、か。
安藤君にしてみれば「計算のうち」なんだろうけど、正直なところ僕は不安だな。
まぁ、僕はマネジメントしかしないつもりだし、丸久ちゃんに注文も加えた。あとは神のみぞ知るといったところか。
……グレフェス、第一回戦の前日から盛り上がってるな……。他のグループの様子も見ておくか……。

 

北河と虎屋には大分無茶苦茶を注文してしまったな。
だが、羽鳥の性質と当日の緊張感を考えれば、俺から出せる答えとしては最適なものを出したつもりだ。
あとは羽鳥のメンタル……いや、「表現力」次第。
……勝ちたい。初めてだからって、侮られたくない。

 

……やっぱり、どうしても、無理みたいだな……。