バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

42 午前一時十二分

『……ごめん、やっぱあんたにしか頼れなくて』
「構わない。それでお前の気が晴れるのなら」
『うん……』
「Beau diamantの事か」
『というか……、あのリーダーのこと』
「だろうな。あそこまで自己中心的な性格を隠さないのは逆に尊敬する。そして、それがお前にとって一番腹が立っていることも分かる」
『……』
「……お前はどうしたいんだ」
『……本当は、殴りたいくらい腹立たしいわよ。でも、殴ったくらいじゃあれは反省しない。だから、彼女の支えを全部折って、立ち直れないくらい「社会的制裁」を与えないと』
「だが、自分はそれを主導できる立場じゃないと……。そんな自分にも嫌気がさしているな」
『……ほんと、あんた、私のこと何でも知りすぎよ』
「何年の付き合いだと思っている。……だったら、俺たちのできる方法を取ればいい」
『そう、ね』
「次のグレフェス、絶対勝つぞ。これは俺たちだけじゃなく、お前に頭を下げたベーシストのためにもなるんだろう」
『……怒りさえも、前を向くエネルギーに、する』
「餅は餅屋だ。やるべきことは、小さいながらも結束するはずだからな」
『あんた何歳よ』
「気になるほどじゃないだろう。……本番まであと数日だ。体調を整えておけ」
『うん。……ありがとう、よしくん』
「おやすみ、イズミ」

 

ずっと、「いいこ」で生きてきました。
「いいこ」を求められたので、「いいこ」で生きてきました。
その言葉は絶対だと思って、いつの間にか「いいこ」を「演じる」ようになりました。
大人の指し示す方向に歩いていけば安寧だと思ってました。
だけど、都合のいい大人が「いいこ」を取り合って利用する光景に気付くのが遅くなりました。
私は利用する大人に反抗して、一番大切にしていた道を逸れました。
大人が怒ってきたので、私は武器を振りかざしました。大人は黙りましたが、許してはくれませんでした。
いつの間に私は、また「いいこ」を「演じる」ようになりました。
今度は大人のためじゃなくて、私を信じる仲間を裏切らないために。

 

あの子を、泣かせないために。