バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

残響の後

「本っ当に申し訳ございませんでした!!」
音が鳴る勢いで頭を下げる梅ヶ枝
「せやからその事はもういいて言いよるやろ。こうしてラーメン奢ってくれとるんやし」
呆れた声で真苅が返した

あの後、鬼才の薬を流し込まれ病院に担ぎ込まれた梅ヶ枝はすんなりと回復した
マインドアウトする直前まで事を覚えていたらしく、先程からひたすらに謝り倒していた
無理もない。完璧主義の自らが犯した過ちは永劫引きずるものである

「とは言っても、君の判断がなかったら本当に止められてたかわかんなかったしね」
鬼才が言う。その言葉に梅ヶ枝と梨沢を除く全員が首をかしげた
「判断って、梨沢に連絡したことか?」
「あれ、分からなかった?」

「僕らが到着した時、梅ヶ枝君は右肩に深い傷を負っていて右腕が使えなかった。でも、マインドアウトした人は普通怪我は回復しているはずでしょ?」
そこまで聞いて、栗原が膝を打った
「もしかして、自分の実力を落とすために、あえて怪我をしたってこと?」
「そう。利き腕である右腕も使われてたら、僕も加担しなきゃいけなくなってた」

「……なぁ、梅ヶ枝」
いつものトーンで梨沢は梅ヶ枝に呼び掛ける
「確かに完璧主義のお前からすればやらかしたかもしれねぇけどよ、俺達だって助けられてんだ。ちょっとくらい甘えてもいいだろ」
「……お気持ちは分かります。ですが、これが私の、「異端」たる由縁。そう簡単には治りません。ご了承ください」
梅ヶ枝は力なく笑った

「よーし、ほな、皆!久しぶりの博多豚骨ラーメンや!食っていこうで!」
真苅の言葉に全員が箸をとる
今日も異探偵は平和に終わろうとしていた