32 どんでん返し
ドラム缶に引っかかり、また転びそうになる
それでも姿勢を起こし、無理にでも次の一歩を踏み出す
後ろからは屈強な男たちが追ってくる
怖い。彼女は思っている。でも、逃げ切らないと、死んでしまう
どうしてこんなことになってしまったのか
彼女の中にその答えを出す術はなかった
大丈夫
昔お気に入りだったヒーローアニメの主人公が言っていた
大丈夫、大丈夫
諦めなければ、絶対にどんな状況も切り抜けられる
「大丈夫……」
彼女は呟き、再び歩を進めた
「……おかしいな」
懐中時計を見ながら『猿回し』は呟いた
「たかだか殺人鬼一人殺すのに、こんなに時間がかかるか?」
「じょ、上官!」
その時、彼の背後の扉が開き、部下が飛び込んできた
「この建物に侵入者が! こちらへ向かってきます!」
「なんだと……?」
その部下の背を蹴り、一人の女性が中に入ってきた
その目はまっすぐ『猿回し』を睨み、一つ、声を上げた
「お疲れ様ね、『猿回し』」
「マヨイ・ハヅキ……?」
その反応に、「彼女」はにやりと笑った
「私が『仕立て屋』よ」