下上蜜柑の憂鬱
「下上さん、コーヒー、ここに置いておくからね」
鬼才の手からコーヒーカップが置かれる
下上はそれをちらりと見たが、すぐに仕事に戻った
「……ねぇ、下上さん」
鬼才が声をかける
「君はどうしてそんなに異端が嫌いなんだい?」
下上はこちらを見た
「僕、何かしたかな?」
首をかしげて問う鬼才の襟首を、下上は突然掴んで引き寄せた
「あんたの所業のせいよ! あんたがあんなことしなかったら、あの子たちは、私だって……!!」
「……」
下上ははっとし、襟首から手を離した
「……すみません」
「いいんだ。それより、君は「記憶を持っている」んだね」
「断片ですけど」
「貴方があんなことしなければ、私はもっと、異端を許容できたと思います」
「……」
「もう、いいでしょう。仕事に戻ってください」
下上はそれだけ言うと今度こそデスクに向かった
「ごめんね」
鬼才はそう言って立ち去った