バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

お題SS 「仮面、戦い、勝った奴は負けた奴に命令権」

血しぶきがまた舞った
それを見て彼は口笛を吹く
「やるねぇ、お嬢さん。そんなドレス着ておいてここまで戦えるなんてよぉ」

女の姿は白いドレス。もっとも、裾は血にまみれて真っ赤であるが
対する男の姿はタキシード
これは戦い。互いの顔は仮面に阻まれて分からない
持つのはグラスではなく、一本の剣
「仮面武闘会」。誰が言ったか、そんな呼ばれ方をしていた

女の剣がひらめく
まっすぐ突き出されたそれを男はよけ、間をおいて着地した
「……」
「「怖いの?」ってか? 生憎そんな感情はどこかに捨て去ったよ」

女は間を詰め、剣を振るった
しかし、目の前に男はいない
「……おやぁ?」
背後から男の声
同時にずしりときた剣の重み
彼女は思わず剣の先を見た

男が、軽業師のようにそこに立っていたのだ

チェックメイトだよ、お嬢さん」
男は切っ先を女に向けた
女は剣をはらったが男は軽く飛び降り、切っ先で顎をとらえた

「……さて、お約束だ、お嬢さん。負けた君は勝った僕の言うことを聞かなくてはならない」
男は女の仮面を外しながら言った
「「笑え」、笑顔を忘れた小さき淑女よ」