お題SS 「仮面、戦い、勝った奴は負けた奴に命令権」
血しぶきがまた舞った
それを見て彼は口笛を吹く
「やるねぇ、お嬢さん。そんなドレス着ておいてここまで戦えるなんてよぉ」
女の姿は白いドレス。もっとも、裾は血にまみれて真っ赤であるが
対する男の姿はタキシード
これは戦い。互いの顔は仮面に阻まれて分からない
持つのはグラスではなく、一本の剣
「仮面武闘会」。誰が言ったか、そんな呼ばれ方をしていた
女の剣がひらめく
まっすぐ突き出されたそれを男はよけ、間をおいて着地した
「……」
「「怖いの?」ってか? 生憎そんな感情はどこかに捨て去ったよ」
女は間を詰め、剣を振るった
しかし、目の前に男はいない
「……おやぁ?」
背後から男の声
同時にずしりときた剣の重み
彼女は思わず剣の先を見た
男が、軽業師のようにそこに立っていたのだ
「チェックメイトだよ、お嬢さん」
男は切っ先を女に向けた
女は剣をはらったが男は軽く飛び降り、切っ先で顎をとらえた
「……さて、お約束だ、お嬢さん。負けた君は勝った僕の言うことを聞かなくてはならない」
男は女の仮面を外しながら言った
「「笑え」、笑顔を忘れた小さき淑女よ」