バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

不退転の毎日(有罪裁判官)

私、不退転という者っす
有罪裁判官ナンバー2……の部下。つまりは下っ端の裁判官っす
有罪裁判官は普段は天の国にいるんすけど、私は地上の監視のため、蓮池を通した下界、つまり、人間で生活を送ってるっす

最初は大変っした
何でも頂ける天界とは違って、自力で物を手に入れなくてはならなくて、不慣れだったっす
お金は天界から仕送りが来るんで、毎日街のパトロールをしているんすけど、おかげで近所の住民からは名前を覚えられたっす
あ、無論、私が天使だってことは内緒っすよ?
兎に角、街を周りながら情報をあつめ、上に報告してまわる毎日っす

「あ、不退転さん」
不意に声をかけられたら、振り向くしかないっすよね
そこには赤い髪の男性が立っていたっす
勿論、知り合いっすよ。だって管轄内の「執行人」すから

「一隻さん!」
「久しぶり。元気にしてたかい」
「勿論すよ!一隻さんもお元気そうで」

「それで、街の様子はいかがすか?」
何気なく訊くと、一隻さんは素直に答えてくれるっす
「ちょっと捕らえるのに手こずってる犯罪者がいてね。もしかしたらお願いするかもしれない」
「罪状は?」
「強盗殺人。3人殺して、金品をほぼ全部かっさらっていった」
「了解っす。上に報告しておくっすね」
「助かるよ」

「此処であったのも何かの縁だ。一緒にお茶でもしないかい?」
「いいっすよ!」
こうして私の一日は過ぎていく
そして夜になれば、私はハンマーを片手に夜道を歩く
いつものこと。いつものこと