バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

33 残り三日

月齢はまわり、何度目かの満月が顔を出そうとしていた
大量の死体を横目に見ながら、ルソーは夜空を見上げる
立て続けに起こる身内の事件。『薬師』『匠』、『猿回し』にいたっては姉がかかわった
「もう、立ち返ることはできないのですね」
ルソーはひとりごち、携帯端末を取り出した

「ハシモト」
『おう、お前か。どうした』
「暫く家をあけます。心配するなと姉さんには伝えてください」
『……何を考えている』
カルミアに、乗り込みます」

『止めろ、ルソー』
ハシモトは声をはった
『前回はたまたま殺人鬼がそろったからできたんだ。一人では危なすぎる』
「……確かに、一人では危ないかもしれません。でも」
ルソーは顔をあげた
「もう、姉さんを巻き込みたくない」

「……そうかい」
不意に後ろから声をかけられ、ルソーは振り向いた
ハシモトが手をひらひらさせながらそこに立っていた
「ハシモト、貴方、いつの間に」
「偶々声が近くから聞こえたんでな」

「だったら俺にも協力させろ。何のためにマヨイが金を巻き上げてると思っているんだ」
ハシモトは煙草に火をつけた
「これでも姉貴ほどじゃないが、お前のこと、心配してるんだぜ」
「ハシモト……」

「殺人鬼の手配は俺がする。三日待て。そしたらこっちからゴーサインを出す」
「……分かりました」
ルソーはくゆる煙草の煙を眺めていた