バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

40 絶対、絶体、絶対

「『弁護士』ィ!!」
吠える声が聞こえる
それに気が付き、わずかに目を開くルソー
そこには、いつもの仲間がいた

わっと集まる殺人鬼と犬の群れ
それぞれが機械のアームに掴みかかり、一つ一つ壊していく
『匠』が邪魔しようとするが、それを阻む人影
「姉……さん……?」
そこには傷だらけになりながらも包丁を構えるフブキの姿があった

「ルソー。貴方は私のために危険を冒してまでカルミアに立ち向かった」
フブキは僅かに後ろを見ながら言う
「だから今度は、私が助ける。絶対に」

「その程度でくたばるんじゃねェぞ、ルソー!」
ハシモトが犬笛を持ったまま言う
アイラもヤヨイも、草香までもがアームに掴みかかる
「あと一撃、見舞ってやれ!」

「……皆さん、ごめんなさい」
ルソーは四肢に力を込める
コードの切れる音が聞こえる、少しづつ、拘束する力は弱まっていく
意識が朦朧とする中、ルソーは右腕を必死に左胸に持って行こうとする

「『匠』、その女一人に何をてこずっている」
「意外と強いんすよ、この女。俺も手負いだってのもあるけど」
「言い訳する身分になったか」
『ボス』の威圧に『匠』は震えあがる気分だったが、今はフブキを見るしかない

「……姉さん、下がってください」
ギギギと音を立てながら、ルソーは右腕を左胸にあてた
ずるり。そこから現れたのは鯨包丁
ルソーはすうっと息を吸い、その場から「消えた」

驚いている暇はなかった
金属音が上がり、衝撃で鋸と鯨包丁が宙を舞う
衝撃に耐えかね『匠』は後ろに飛ばされる
そして

『弁護士』は、『ボス』の首筋を掻き切っていた