医者の真似事
数日間隔でこの山奥にある研究所に行くのも、ツキトは慣れてきていた
口は悪いが実績のある科学者・大黒屋は自分には猫をかぶらずに接してくれる
何だかそれが嬉しかった
「おはようございます」
そう言って研究所に入ると、応接間に見たことのある金髪が見えた
「よう、ツキト」
「梨沢さん」
「ツキト、待ってたんだ。準備ができたらこっちに来てくれないか」
大黒屋の呼びかけに、ツキトは首を傾げる
自分を待っていた?
「あ、はい。わかりました」
深いことは考えず、彼は奥へと引っ込んだ
「それで、だ。梨沢」
「大方俺の力も必要って魂胆だろ? いいぜ。俺とお前の仲だ」
「助かるぜ。『もう一つの闇』に関しては、俺より闇華やお前の方が詳しいはずだからな」
「準備が終わりました」
ツキトはそう声をかけて中に入ってくる
大黒屋は梨沢の横のソファを示し、ツキトを座らせた
「ツキト、お前、自分の属性についてどこまで把握している?」
「え?」
ツキトは記憶を巡らせるが、思い当たることがない
「……何も、わかりません」
「だろうと思った」
「医者の真似事は嫌いなんだが」
大黒屋はそう前置きして言った
「お前の「闇」、今後のために解明しておきたい」