バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

医者の真似事

数日間隔でこの山奥にある研究所に行くのも、ツキトは慣れてきていた
口は悪いが実績のある科学者・大黒屋は自分には猫をかぶらずに接してくれる
何だかそれが嬉しかった

「おはようございます」
そう言って研究所に入ると、応接間に見たことのある金髪が見えた
「よう、ツキト」
「梨沢さん」

「ツキト、待ってたんだ。準備ができたらこっちに来てくれないか」
大黒屋の呼びかけに、ツキトは首を傾げる
自分を待っていた?
「あ、はい。わかりました」
深いことは考えず、彼は奥へと引っ込んだ

「それで、だ。梨沢」
「大方俺の力も必要って魂胆だろ? いいぜ。俺とお前の仲だ」
「助かるぜ。『もう一つの闇』に関しては、俺より闇華やお前の方が詳しいはずだからな」

「準備が終わりました」
ツキトはそう声をかけて中に入ってくる
大黒屋は梨沢の横のソファを示し、ツキトを座らせた

「ツキト、お前、自分の属性についてどこまで把握している?」
「え?」
ツキトは記憶を巡らせるが、思い当たることがない
「……何も、わかりません」
「だろうと思った」

「医者の真似事は嫌いなんだが」
大黒屋はそう前置きして言った
「お前の「闇」、今後のために解明しておきたい」