バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

25 登校しない女生徒

「あいつ、陣内朝霧っていうんだけどよ、俺たちとは比べ物にならねぇ位頭がいいんだ」

帰路についた雲外と虚空は、先ほどの眼鏡の女生徒の話を暁にしていた。

「噂だけど、入学したての時に受けたクラス分けテストを五分で解いて、裏に図形を描いて遊んでいたらしい。で、結果満点だったとか」

「今は登校免除になって学校には滅多に顔を出さなくなったけど、その代わりに近くの大学に講義を聞きに行っているらしいです。籍だけうちに置いていて、行事や、ああして時折己らのところに顔を出してくれるんですよ」

 

暁は考えていた。そんなにも頭脳明晰な彼女が、平凡な自分のことを「同じ」だと言った。その理由とは何か、と。

「水城、休日の彼女に会ったことはあるか?」

「ああ。俺から遊びに誘ったことはある。あいつ、趣味が人間観察らしくてさ。行きかう人を追い回すように眺めてたよ」

「……そうか」

 

「それにしても、不思議な人ですよね。時々己たちが思っていることまでズバリ言い当ててしまうところとか」

「天才の頭脳は分かんねぇな」

そこまで聞いて暁は一人静かに納得していた。

「……仮面」

「ん?なんか言ったか、暁?」

「いや、なんでもない」

 

暁に、焦りが募った。

彼女を見た時、親しそうに振る舞う彼女からは、敵対心の「音」が聞こえていたからだった。