「洗脳」の眼を持つ少年【ディクライアン過去編・3】
家を失った俺たち三人は、路上生活を始めた。
不思議なことに、食うのには困らなかった。食べ物を乞えば、いつも多少分けてもらえていたからだ。
貰ったわずかな物資は、弟に先に分け与えた。それが兄としての義務だと思っていた。
しかし、そんな環境にも徐々に変化が訪れる。
人が、殆ど通ることが無くなった。
不思議に思って、俺たち三人は初めて街へと繰り出した。
人が多く往来する場所。いずれもが俺たちを見ると、眉間に皺を寄せて去るか、興味本位に眺めてきた。
俺はそんな人々に、今のこの街の情勢を問いかけた。
皆、数人は嫌がる素振りを見せたものの、親切に教えてくれた。
黒い武装集団が子供のいる家を襲っては大人を殺して子供を連れ去っているらしい。
俺たちはその例外に漏れた存在だった。その代わり、指名手配されていた。
危険な子供たち、だかららしい。写真はぶれており、よく見ないと分からない物だったが。
そうして皆、最後に言った。
「早く逃げなさい」と。
瓦礫をよけながら歩いていると、ゴミ捨て場にたどり着いた。
黒い武装の大人たちが歩き回っている。
俺たちは隠れながら先に進んだが、俺は途中で思わず足を止めてしまった。
自分の眼が、真っ赤に染まっていた。
後に知る。自分は、「洗脳」の力を持っていた。