バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

11 強運の持ち主

「にしてもよ、マヨイの力って、そんなに脅威的にも聞こえないんだけどな」
アイラがぽつりと呟く
それに草香が答えた
「なめてかからないほうがいいですよ。ある意味では、私たちより脅威かもしれない」

「でも、例えばあれだろ。サイコロの出目がわかるとか、その程度じゃねぇのか」
「そう言ってしまえばそれまでかもしれませんが」
ルソーは資料をめくりながら返した
「今までその「力」により、僕たちが駆け付けるまでの間、あらゆる身の危険から助かってきたのも事実です」

「そう、彼女にかかれば、サイコロやコインの出る面を当てるなんて、遊びに過ぎないんですよ」



「……すごい」
ヤヨイは小さく呟いた
彼女の目の前には、いくつものサイコロが並んでいた

「私なんて、このくらいのことしか自慢できないんです」
自嘲的にマヨイは言った
「でも、サイコロの出目を完璧に当てるなんて、今まで見たことなかった」
「皆、そういうんです。だから、普段はめったにこんなことしないんですけど」

「貴方、本当に「強運の持ち主」なのね」
「……そう、なりますね」
時計は四時をまわろうとしていた