バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

【LWS創作】進みすぎた刻・3

「大黒屋さん」
日がすっかり落ちたというのに、彼は明かりもつけず、空を見るのを止めなかった
空に何の意味があるんだろう。何度も問いたくなったけど、僕は黙ってみてることしかできなかった

「皆、もう出ていきますよ」
今夜は革命の日。あの日の後そう決めた僕たちは、手始めに一番近い役所に「交渉」に行くことにしていた
勿論、その内容は「交渉」なんて甘いものではない
簡単に言えば、襲いに行こうということだ

「俺のことはかまうな。行って、後悔して戻ってこれば十分だ」
「でも、」
「なぁ、お前ら、何を目的にしてそんなに焦ってるんだ」
大黒屋さんのその言葉に、僕は返すことができなかった
成り行きで入って、流れに身を任せていた僕に、「目的」なんてものはなかった

「期を待てと言ってるのに聞かないんだったら、俺は責任をとれない。それだけだ」
相変わらず外で輝く月を眺めながら、彼は言った

「……大黒屋さんは、なんで反抗勢力なんかに、身を置いているんですか」
僕は思い切って彼にそう訊いた
怒られるかもしれない。それでもよかった
でも、彼はあくまで冷静に返した

「政府機関に、幼馴染がいるんだよ」
「幼馴染、ですか?」
「実験体にされた可哀想な「被害者」でね。その力に苦しみ、過去を断ち切ろうとしている。俺は、あいつを救ってやりたい。それだけのことだ」
大黒屋さんはそう言って、こちらに視線を向けた

「だから、俺は俺のやりたいようにする。お前らも、やりたいようにやれ」
「……」
言葉が続かなくなった僕に、大黒屋さんは手で払う動作をした
もう行け。そう言うかのように
僕は曖昧に頷いて、部屋を後にした