バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

1 引っ越し

ガタン

大きく体をゆすられ、遠賀川暁は目を覚ました
薄暗いトラックの荷台にゆすられる経験はそうそうできないというのに、寝ていたようだ。

「……」
ヘッドホンに手をあて、遠賀川はうつむく
黒地のヘッドホンに、同じ黒でウサギのマーク
彼は聴覚が過敏……否、「特殊」であった

「ついたぞ、お客さん」
低い声で呼ぶのはトラックの運転手
その声を聞いた遠賀川はトラックを降りる

少し肌寒い春の陽気はここも変わらないようだ
住宅地のアスファルトを踏みしめた彼を最初に出迎えたのは、天を高く突く鉄塔であった
「……」
遠賀川は暫くそれを眺めていたが、下宿先の宿主に挨拶をせねばと歩き出した

水鏡町
ここが、この物語の舞台である