バ科学者のノート 2冊目

小説をただひたすらに書いていく

10 一人の戦場

『聞こえるかい、信行』
イマイの声がイヤホン越しに聞こえてくる
確かに家愛と秀忠もついてきてはくれるが、自分がやらなければという重圧が襲い掛かる
「聞こえてます、『判決者』さん」

『メイス使いはこの先にいる。不意打ちを仕掛ける必要はない。確実に殺せ』
「……わかり、ました」
『ふむ……、術は効いてるが完全ではなさそうだね』
独り言のようにイマイは言う

「いたわ」
家愛が声をあげた
そこには確かにパネルで見た男が立っていた
既に誰かを殺していたのだろう。うち捨てられた死体と赤い海が広がっている

「……誰だ」
男も気が付いたのだろう
身体をこちらに向けて言う
信行は隠れるのをやめ、まっすぐ現れた

「君を殺しに来たものだ」
声は震えていた
しかし、ぐっとその場で踏ん張り、彼は名乗った
背が高く筋肉質な体。左胸に腕を押し付けると、重みのあるメイスが現れた
それに対抗するように、信行も大鎌を取り出す

「名を名乗れ」
「僕は『首狩り』。この世の秩序を正すもの」
一触即発の均衡は、簡単に破られる